Positive Livingキャンペーン世界エイズ孤児デー国内の活動

「兄の死、能力の限界、無条件の愛」/世界エイズ孤児デーキャンペーン特別企画「私のPositive Living」 vol.17

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4月16日〜5月31日の期間、プラスのボランティア、サポーター、協力者など活動を応援する人たちが毎日ブログを更新!
テーマは「私の Positive Living」。それぞれの生き方や想いを通して、前向きなエネルギーをお届けします。
全国どこからでも、「今日はどんな記事に出会えるかな?」とアドベントカレンダーのようにお楽しみいただける企画です。
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ウガンダにいた2004年、一生忘れられない電話がかかってきた。

青森の実家に住んで働いていた高卒の兄が、亡くなった。

ブラックな運送会社での激務の末に事故を起こし、
失職し、結婚の望みも流れ、
地元の河原で自ら命を断っていたそうだった。

中学の頃から不良少年で、散々心配をかけていた。
その末の、約30年の短い人生だった。

すぐ一次帰国した。

NPOスタッフが、一番身近な人を助けられなかったという皮肉な状況だった。

僕がウガンダで取り組んでいたのは、よりによって、
エイズ遺児の心理的ケア(カウンセリング等)の活動だった。

もっと身近に、話を聴いてあげるべき人がいたんじゃないのか?

一方で、ウガンダでの活動を通して、どんな人・NPOにも
「能力の限界」があると痛感していた。
「無条件の愛情」も存在しない。

エイズ遺児にも不良少年がいたが、そういう子だけにリソースを割き続けることはできなかった。
重みに耐えきれず手を離した子が、ひどい場所に沈んでいったことを後で聞いたりもした。

それと同じだ。兄の件は、自分には責任はない、と思おうとしていた。

「無条件の愛情」へ期待するだけでは、「能力の限界」は上がらない。

ある人が、死に向かおうとする別の人を、ひとりで支えることはできない。

人は、コミュニティやつながりの中でしか守れない。

自分のせいではなく、社会のせいだ。

結論だったのか、そう思いたかったのか。

 

就職してからは、マーケティングという職務に熱中した。

この技術で、NPOの「能力の限界」を上げられると確信した。
当時、学生時代の活動を続けている友人も多く、彼らのことはずっと心配だった。
プラスの門田さんもその一人だった。
NPOの寄付募集等にマーケティングを応用する活動を始め、やがてそれは仕事になった。

 

2008年に結婚できた。

ウガンダへの新婚旅行に、喜んで乗ってくれるような人だった。
結婚して、無条件の愛情というものもあるかもしれないと思った。
子どもが生まれて、それが確信になった。

子どもが生まれた翌日、彼に致命的な病気が見つかった。
夜半からの手術。永遠にも思える時間を待ち続けた。
明け方、成功したと執刀医から伝えられた。
費用もほぼ全額がカバーされた。
ウガンダに生まれていたなら、死んでいただろう。
自分が恨んでいた、日本という社会に救われた命だった。

それがきっかけで転職した。

今は、再生医療や創薬への貢献が期待される「iPS細胞」の研究に寄付を募る仕事をしている。

どうしたら、今の自分が最大限に社会に貢献できるかを考えての判断だった。

 

人の成長と、社会の進歩は、つながっているのだと思う。

良い社会とは、より多くの人の力になるべく「能力の限界」に挑む人々や、
無条件とまでは言えないまでも、
「出来る限りの愛情」を自分以外の誰かに注ごうとする人々の
比率が上がっていくことで、つくられていくのではないか。

より良い社会を目指し、まず自分がそれを行うこと。

今の自分にとって「ポジティブに生きる」とは、

そういうことなのだと思う。

▼著者プロフィール
渡邉文隆

青森県出身。中学3年で父親を亡くし、あしなが育英会の奨学金で大学へ進学。それを機にあしなが学生募金で遺児のための寄付募集などのボランティアを始める。学生時代に2度休学し、ブラジル・ウガンダでHIVポジティブの人々やエイズ遺児を支援するNGO活動に参加。プラスの人々とも学生時代に知り合う。卒業後、環境ビジネス企業に就職。仕事で、またプロボノとして、NPOや省庁、公共団体のマーケティング支援を手掛ける。2013年から大学の研究所でファンドレイザーとして勤務。子どもは3歳。

Twitter:@fwatanabe
ブログ:世の中のためになる、マーケティング。

 

 

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