PLASの現地活動Positive Living現地レポート

ウガンダレポート|内戦をくぐり抜けたウガンダのパートナー団体代表ムシシさんの活動の原点とは?

今回は、ウガンダのルウェロ県で活動する、パートナー団体「マルチパーパス」の代表ムシシさんのインタビューです。
この地域でHIV陽性者のための支援を立ち上げて15年、その思いと活動ストーリーを伺いました。

(写真:インタビューに答えるマルチパーパスの代表ムシシさん)

独立、内戦を経験する生まれ故郷ルウェロ

生い立ちやこれまでの経歴について聞かせてください。1959年にルウェロ県で生まれました。

その頃のウガンダは、イギリスから独立したばかりで、私が子どもの頃のウガンダはとても混乱していました。ルウェロでも銃声が響きあうことがありました。

その混乱が静まってからは、無事に教育を受けることができました。

学校を卒業してからは、首都カンパラの企業で働いていました。けれども、その時ですね、人生が大きく変わったのは。

1980年代、ウガンダで内戦が始まったのです。

私はカンパラの企業で管理職についていたのですが、故郷のルウェロは内戦の影響を大きく受けて、親戚も亡くなりました。

私は地元に戻り、偵察隊の一員として内戦下をくぐりぬけました。内戦の状況はひどいもので、食料も少なく、衛生的な飲み水はなく、たくさんの人が日常的な下痢にも苦しみました。

1986年に内戦が終わってからは、保健センターで働いていたのですが、そのときに自分がHIV陽性だとわかりました。

HIV陽性者が人生を享受できるような社会を作りたい


(写真:マルチパーパスの代表ムシシさん)

活動に取りくむことになった原点は何ですか?

故郷の人々が、戦争やHIV/エイズなどで苦しむのを目のあたりにして、彼らを助けたいと思ったのが原点です。ルウェロは戦争で苦しんだ人もたくさんいますし、HIV陽性者も多くいます。戦争の影響で両親を亡くして孤児になった子どもや、保護者のいない子ども多くいました。

しかし、私は内戦を経験したHIV陽性者ですが、健康に暮らせていますし、5人の子どもたちを育てました。エイズなどで苦しむ人たちが健全な生活を送れるように助けたい、という気持ちが原動力です。

マルチパーパスを立ち上げたのはいつですか。

2003年に活動に賛同する仲間たちと立ち上げました。

マルチパーパスのミッション・ビジョンは何ですか

HIV/エイズによる影響や貧困を解決するために、HIV陽性者が自身の力で問題を解決するために活動することがミッション(役割)です。

私たちのビジョン(実現したい社会)は、HIV/エイズなど予防できる病気に命が脅かされることなく人々が人生を享受できる社会をつくることです。

「美しいルウェロ」へ向けて

(写真:マルチパーパスの代表ムシシさん)

これまでの活動の実績を教えてください

エイズへの正しい理解を促す啓発をとおして、エイズに対する意識を変えることができたと思います。マルチパーパスは、HIV陽性者からなる組織で、設立当初は偏見もあり、自発的に参加する人は多くありませんでした。この組織に属することは、陽性者であることを意味していましたからね。

それが、いまでは1,023人のメンバーからなる組織に成長しました。

HIV陽性者への劣等意識や差別も減ってきて、メンバーは進んで活動に参加するようになりました。いまではエイズの問題について気兼ねなく話せますし、人目を気にすることなく、私たちが提供するコンドームを取りに来ることもできます。

また、女子教育にも力を入れていて、今年は私たちの支援で7名が大学に進学できました。来年には5名が大学を卒業します。

PLASとの事業では、ペーパービーズやカフェビジネスを通したHIV陽性シングルマザーと、その子どもたちを支援できています。生計向上支援を通じて、シングルマザーたちはスキルを身につけ、自立して暮らし、子どもたちを支えることができています。私たちの夢は実現してきている、と言えるでしょうね。

活動をはじめた15年前から今までを振りかえり、地域にどんな変化がみられますか

HIV陽性者への偏見や差別が少しずつ和らいできたことですね。

もちろん、陽性者だと打ち明けることは、多くの人にとって簡単ではないですし、差別や偏見の問題は今でもありますが。

10年後にどのような地域を実現したいですか

人々にとってエイズが脅威でない、そんな地域を実現したいです。

これを私は「美しいルウェロ」と呼んでいます。この目標達成のためには、政府が目指す「90-90-90」をクリアしなければなりません。これは、(1) HIV陽性者の90%が検査を通して自分のステータスを知る、(2) 陽性と診断された人の90%が、定期的な抗レトロウイルス治療を受ける、そして、(3) そのうちの90%がエイズを発症しないようウイルス量を抑える、というものです。

これをルウェロで達成するために、いまPLASと新たな事業を計画することができています。日本の支援者のみなさまに、心より御礼をお伝えします。