PLASの現地活動ケニアプロジェクト-FRESH現地レポート

ケニアレポート|持続可能な地域をつくる「FRESH」プロジェクト

ケニアのホマベイ郡ビタ準部。
ヴィクトリア湖に面した漁業が盛んな人口107万人ほどの地域です。

この地域の成人(15歳以上)のHIV感染率は20.7% (※)で、ケニア国内でも感染率が高い地域です 。

この地でPLASは、ケニアの現地パートナー団体・ヴィアジェンコとともにHIV陽性 のシングルマザーを中心とした貧困家庭が在来種野菜と樹木を組み合わせた農業を行える環境をつくる活動をしています。

プロジェクトの愛称は「FRESH」。
Farming enhancement for Resilient and sustainable Economy of Single-parent Households
活発で持続可能な地域経済にむけた、片親家庭の農業強化による生計向上支援事業

これによって、彼女たちが食糧を確保し抗HIV薬の服薬を続けやすくすることと、作物販売によって収入を得て子ども(エイズ孤児)が学校に通えるようになることを目指しています。

地域の課題

ビタ準部では、雨量が不安定な年も近年では多く、2016~2017年の東アフリカを中心とした干ばつではこの地域も影響を受けました。
地域によっては水源から遠く、農業用水の確保が難しい場所もあります。

そこで、その土地の環境や気候に適応した在来野菜の栽培を推進することに。
葉野菜や豆類など現地の人々にも広く知られていて、比較的乾燥や病気にも強く肥料や農薬を多く必要としないため、経済的に苦しい家庭でも安価で栽培が可能です。


しかし一方で、この地域ではヤギやウシの放牧がされています。
現地で調査したところ、この家畜によって野菜の葉や根が食べられる被害が、在来野菜の栽培に積極的でなくなり理由となっていることが分かりました。

この被害を防ぐため、このプロジェクトではフェンスを建設。
プロジェクトに参加する過程の、野菜栽培に対する意欲も高まります。
また、水源から遠い家庭にはロバを配布。水源で汲んだ重い水をロバの背に載せて運ぶことが可能になり、野菜の栽培に必要な水を確保しました。

フェンス建設の様子。

 

ロバの配布。前の写真のような傾斜地で水源が遠いと、人の手で農業用水を確保するのは困難です。

持続可能な地域をつくるための長期的な課題

この地域にはもう一つ、大きな課題があります。
それは樹木の伐採。

この地域では薪や炭などの燃料とするため、自生する樹木の伐採が進んでいます。

これによって土壌がむき出しになり、雨が降り土壌を侵食しているところも見られます。
樹木は、長期的に、土壌の安定化や改善、生態系の保全といった恩恵をもたらし、その地域に生きる人達が持続的に生活していけるための基礎となります。

伐採が続けば、地域の持続性が失われ、人々の生活が成り立たなくなることも予期され、樹木の育成が急務となっているのです。

そのため、このプロジェクトに参加する各家庭では在来野菜だけではなく、樹木の栽培も組み合わせているのです。

写真はパパイヤの木。果実はもちろん食べることができます。

プロジェクト参加者への研修実施

PLASおよび現地パートナーが主導して、地域の行政官(農業局、森林局)による苗木の植え方など野菜栽培研修を実施しました。
研修は、農業の開始前だけでなく、プロジェクト始動中もフォローアップ研修を行い、畑を巡回して個別の指導も行っています。

ロバの提供を受ける家庭には、家畜局の行政官によるロバの飼育研修も実施ししました。

現在はプロジェクトの期間が終了し、各家庭のモニタリングに入りました。
参加した多くの家庭で栽培が進み、多くが作物の販売によって収入を得ています。

この地域の人たちが自身の生計を立ててゆけるようになると同時に、地域全体が持続可能となるよう、パートナー団体とともに引き続き見守っていきたいと思います。