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【Weekly News】ケニア: 男性の母子感染予防プログラム参加を阻む障害

HIV の母子感染予防において重要な役割を担うものとして、男性の協力が推奨されている。あるケニアの研究報告によると、母子感染予防プログラムへの男性の参加によって、子どもへの感染率および死亡率が40%も減少するという。しかし一方で、男性の参加を呼び掛ける活動は、時に家庭内での不和や暴力を誘発することもある。

ケニアで6人の子どもを育てる Silvia。14歳からの結婚生活は、出産前検査で HIV 陽性と診断され、検査のため夫も連れてくるよう診療施設に告げられた時から一変した。「私は検査の結果 HIV 陽性と診断されました。当時妊娠していた子どもを出産できるか心配になったのですが、看護師は大丈夫だと言ってくれました」。彼女は当時を振り返る。「そして、検査のため夫も病院へ連れてくるように言われたのです」。  
      
彼女は事情を夫に打ち明け、病院へ一緒に来るよう話した。しかし、夫の検査結果は HIV 陰性。夫は彼女が不倫していると疑い、激怒する。「夫は暴力を振るうようになり、私が妊娠しているのは自分の子ではないと責めて、私を家から追い出したのです」 。そして彼女はこう付け加えた。「看護師は私たちのためを思ってしてくれたことだとは思いますが、結果として私たちの家庭は崩壊してしまったのです」。

HIV 検査に関連する男女間の暴力については、豊富な調査結果が揃っているとは言えない状態だ。しかし NGO 機関であるSonke Gender Justice Network が2010年オーストリアのウィーンで開催された国際エイズ学会での報告によると、HIV 陽性の事実を夫に打ち明けた際の反応は多くの場合、 「複雑だが好意的」 だという。同様の状況で、暴力が発生する確率は約14%だという研究もあるが、一般的には HIV 陽性の女性が夫に告白した際、夫は打ち明けてくれたことに好意的になり、サポートする意思を伝えてくれるという。

エイズ・人口・保健統合援助(APHIA Plus)主導の母子感染予防(PMTCT)プログラムで職員を務める Beatrice Misoga 氏は、男女間暴力が発生するのは男性が陰性の場合がほとんどだという。「母子感染の防止は家族レベルの問題のため、男性側の参加が必要なのは言うまでもありません。しかし男性が協力を拒否して、結果女性が暴力の対象となってしまうという問題が依然としてあるのも事実です」。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは2009年、大規模に展開されている在宅カウンセリング・テスト プログラムにおいて人権が守られていないとして、ケニア政府に警告を行った。特に、18歳未満の少女も含まれる HIV 陽性と診断された母親たちが、夫や親戚、あるいは自分の家族から暴力や虐待、勘当、差別といった扱いを受けていることを指摘している。

女性の中には、HIV 陽性の事実を夫に伝えることによる悪影響を恐れて PMTCTプログラムから脱退する者もいる。「訪ねてきた女性の中には、夫も連れてきてほしいと伝えると、それからもう出産直前まで現れなくなってしまったり、極端な場合では伝統的な出産方法を行うような施設に移ってしまうこともあるのです」。ニャンザ地区のシアヤ地区病院に勤務する看護師は語る。

男性によるサポート

Misoga 氏によれば、男性の協力を維持するためには、病院にとっても男性へのカウンセリングの重要性を認識する必要があるという。「様々な障害はありますが、男性の参加は非常に重要です。そのために、病院での出産前検査に男性も通いやすい環境をつくる必要があります。また母子感染予防プログラムの一環として、男性をターゲットとした定期的な情報とメッセージの配信も大切だと思います」彼女は語る。

地域ピア・エジュケータを務める Christopher Mukabi 氏は、夫婦の HIV 診断率の向上に、男性によるサポートグループが役立ったと話す。「男性サポートグループに夫を連れてきてもらい、PMTCT プログラムに参加するよう説得することでこのような問題の解決を目指します。しかし男性の中には未だにこういった活動に参加することを恥と考えるも多くいます。またアルコール依存症の問題もこの活動の障害となっているものの一つです」。

(文責:川﨑涼友)
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原題:KENYA: The downside of male involvement in PMTCT
日付:January 6, 2012
出展:PlusNews
URL:http://www.plusnews.org/report.aspx?ReportID=94652
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