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【Weekly News】HIV感染移民に立ちはだかる差別の壁

〜UNAIDS(国連合同エイズ計画)運営委員会は移民の権利保護をもっと訴えるべき〜
国際機関、各国政府やドナーは、移民や移住労働者の人権を守り、彼らがエイズの感染予防と治療に取り組めるよう努めなければならない。6月22日にジュネーブで開催されたUNAIDS(国連合同エイズ計画)の事業調整理事会に先立ち、Human Rights Watch(人権NGO、以下HRW)は移民の人権に関する報告書を発表した。
移民への差別や人権侵害が彼らのHIV感染を広め、また治療やサポートを受けにくくしている。
HRW、保健と人権プログラムのディレクター、Joseph Amon氏は次のように話している。
「差別的な法律や政治活動は移民のHIV感染予防や治療を妨げ、ひいては世界的なエイズ対策をも脅かしている。HIV陽性者の治療ができないという事は、更なる感染拡大を招き、また治療薬に対する耐性ができてしまう可能性もある。それらは結果的に陽性者たちの早期の死を招くことになる」と。
世界では毎年数億人にも及ぶ人々が様々な理由から国内外への移住をしている。2006年の国連総会では、“エイズ予防・治療・ケア・支援プログラムを2010年迄に世界レベルで確立したい”とされていた。しかし多くの国では、HIVと共に生きる移住者たちが治療や支援を受けるのが難しいというのが現状だ。差別を助長するような法律や政治政策によって、HIV感染者の入国・滞在・居住を制限し、また彼らが治療を受けにくくしている。
国際機関、各国政府、ドナー、NGOは世界中のHIV感染移民・移住労働者たちが差別から開放され、また継続的に治療を受けられるよう、法改正や対策強化に協力して取り組まなくてはならない。報告書の中でHRWはこのように続けた。
出身国や市民権の有無などによってエイズの治療が制限される事はあってはならない。
そして、HIVに感染した移民たちを送還させる時、送還後も治療が継続できるかどうかを確認できるような方法も検討していく必要がある。
HIV/AIDSの感染が拡大してからというもの、HIV感染した移民たちが弱い立場に置かれていることはよく知られていたはず。 HRWのAmon氏は強調する。各国政府やドナーは、移民たちのHIV感染予防事業への参加や急を要する治療を受けることさえもできにくくしてしまっていたのが現実だ。2010年までの目標である”universal access” (誰もが感染予防や治療に手が届く状況)とは裏腹に、移民たちは差別や国外追放といった困難に直面している。
(訳:大場菜生子)
原題: HIV-Positive Migrants Face Deadly Barriers
日付: June 18, 2009
出典: Human Rights Watch
URL : http://www.hrw.org/en/news/2009/06/18/hiv-positive-migrants-face-deadly-barriers