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世界のHIV対策のあゆみとこれから【世界エイズデー2018特別記事】

2018年12月1日。
世界保健機関(WHO)が世界エイズデーを定めて30年目を迎え、PLASがエイズ孤児支援活動を始めてから13年が経ちました。
エイズは、かつての死の病から死なない病気になり、世界における対策が移り変わるとともに関心が徐々に薄れていっているとも指摘されています。

HIV対策のあゆみ

HIVの発見から今日まで、医学・医療の世界ではかつてないスピードで、日々、治療や検査が発展し、今までにない官民協働の取り組みによって経済的に貧しいとされるサブサハラの地域にまで治療薬を届けられるようになりました。

 

ARV(抗HIV薬)が開発された当初は一錠が大きく飲みづらく、また強い副作用を伴い、飲み続けるのにも苦労しました。
その割に、比較的早く耐性化し、効かなくなることも多かった。

「エイズと闘うよりARVを飲む方が辛いのではないか」

そんな声もあったと聞いています。

その後徐々に、複数種類のARVを組み合わせて内服することが主流となり、一日3-4回であった内服回数も減り、そして数種類の薬が合剤である1錠になり副作用も大幅に減少しました。

内服が確立して治療が進むことで、陽性者の方ひとり一人が健康になるだけでなく、体内のHIVのウイルス量が減ることで他者へ感染させてしまう確率が下がったことも新規感染者を減らす要因につながりました。

 

またこうした医学の進歩と時を同じくして、ビル・ゲイツ等の資本家もHIV/エイズなど感染症に関心を寄せることで、官民パートナーシップであるグローバルファンド等が、その後ARVをアフリカの地方にまで届けるのに成功しました。
国連やNGOだけでなく、官民パートナーシップと呼ばれる組織が対策に本気に乗り出したことが、これまでのHIVとの戦いにおける成功の一因になりました。

しかし、HIVの新規感染者は減っているものの、HIVの総感染者数自体は減っていません。(※1)
引き続きどのように支援の規模を保っていくのかは、世界に課せられた課題だと思います。

※1 UNAIDS http://aidsinfo.unaids.org/

HIV/エイズとともに生きる社会を築く

それでは、これから先の時代において、次に見えてくるものは何でしょうか。

HIVは一般的には未だ完治が望めないため(※2)、HIVとともに生きていく人は、高齢化し、生活習慣病とHIVと双方を治療するのが当たり前の時代が到来しています(HIVは心疾患等に影響を及ぼす可能性が指摘されています)。

またPLASが支援活動対象としてきたようなエイズ孤児の中には、一部母子感染でHIV陽性である孤児もいますが、彼らが成長して結婚し、その子たちが子どもを産むフェーズに入ります。
引き続き、母子感染予防策は重要で、誰もが予防策にアクセスできるようにするには、地域のスティグマやセルフスティグマ(本人の中にある差別意識)に対する対策が、今後も重要であることに変わりはありません。

 

しばらくの間は、エイズとともに生きる社会を築かなければなりません。
地域での取り組みが活発な今のうちに、しっかり地域において持続可能な取り組みの基盤を確立させることが大切であるように感じます。

※2  数例骨髄移植で完治した患者もいますが、莫大な費用がかかります。

Key Populationへのアプローチの重要性

2016年6月に開催された、国連エイズハイレベル会合に、厚労省として参加しましたが、保健医療分野を超えた政府、国際機関、NGO、陽性者団体などが5年ぶりに集まり、HIV/エイズ対策の進捗を共有しました。

そこで主な議論になったのは、Key Populationと呼ばれる、HIVのリスクに晒されやすい特性をもった人達のグループへの対策をどうするかということです。
国によってはLGBTがいないことになっていたり、麻薬中毒者へは厳罰を課す方針であることなどが、それぞれのグループに有効な対策を取りづらくしています。

2016年までに一律の治療法はおおよそ確立し、サブサハラアフリカの一定の陽性者にまでARVは届くようになっていましたが、さらに対策を進めるためには、一般的な対策に加えて各国それぞれのHIVリスクに晒されやすいグループに対するアプローチを熟化させることが重要であるという認識が広がりました。

 

今、HIV対策は社会がマイノリティとどう向き合うかという課題と表裏一体の問題となってきました。
HIVと向き合うこと、それは、世界だけではく、日本社会においてもイデオロギーを問われているように思えます。

・・・

12月1日を迎える度に、社会におけるHIV対策の歩みとこれからについて考えますが、今回改めて執筆させていただき、HIV対策が重要な局面を迎えていることに気づかされました。

これからも12月1日という日を大切にしていきたいと思います。

文:加藤琢真
2005年ウガンダで初めてエイズ孤児の現状を目の当たりにする。同12月、PLASの設立に携わり2009年までPLAS代表を務め、その後、小児科医として日本の地域医療に従事。2012年はザンビア共和国にて、JICAのHIVサービス展開管理プロジェクトに従事。2010年より、日本の地域と世界の健康格差是正を目指すNPO法人GLOW設立、同代表理事。2014年度より長野県佐久総合病院にて国際保健医療科にて国際保健医療協力および小児科に従事。現在は厚生労働省に勤務の傍ら、2016年よりPLAS理事を務め、国際保健やHIV/エイズの国際的な潮流の視点からPLASの経営に携わる。

PLASは、アフリカのケニアとウガンダにいるエイズによって両親または片親をうしなった子ども「エイズ孤児」たちが、みずから未来を切り拓ける世界の実現を目指して活動しています。

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